1_はじめに

西洋劇の歴史は通常、紀元前6世紀のアテネに始まり、舞台設計の起点も同じ時期に位置づけられる。劇場の遺跡の発掘や劇作の研究を通じて、舞台設計に関する理解は深まったが、その解釈は学者の感性や時代背景に影響され、しばしば矛盾している。

初期の劇場は物理的な構造を持たず、観客は屋外の「オルケストラ」(踊り場)で演技を観ていた。劇場には背景となる建物は存在せず、周囲の自然が一部として演技に関わり、神々、人間、自然が交わる宇宙的な広がりを感じ取ることができた。舞台における「スケーネ」(小屋)は演技の進行にはあまり関与せず、初期のものは木製で、毎年の祭りごとに設置と撤去が行われていた。

紀元前5世紀頃には、アイスキュロスが二人目の俳優を導入し、劇の対立を強調するようになり、その後、スケーネの役割や構造も進化した。特にアテネの建物が多色で装飾されていたように、スケーネも装飾が施されるようになった。やがて、アリストテレスやローマの建築家ウィトルウィウスによって、絵画的な背景の使用が記録され、舞台芸術における美的進化が示唆されている。

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