古代ギリシャ劇の研究者は、シーンペインティングをほとんど無視しており、背景として使われたのは、建物を表現した二次元または三次元の構造物であったと考えている。彼らは、これらの構造物に一つまたは複数のドアがあった可能性を推測するが、遠近法の絵画が使われたかどうかについては言及しない。多くの学者は、古代の芸術家が「直感的な遠近法」を使っていたと考え、物体が地平線に近づくにつれて小さく描かれる「縮小」や、物体の上部と下部から引かれる線が消失点に収束する「観察的な線」などの技法を持っていたと指摘している。しかし、古代にはルネサンス時代に発展したような明確な遠近法のシステムはなかったとされる。
また、ヴィトルウィウスは、消失点を使う意識があった可能性を示唆しており、ボスコレアーレやポンペイの壁画からも、古代には独自の遠近法が存在したことが明らかになった。これらの古代の遠近法は、ルネサンスの方法とは異なり、画面の上部と下部が曲線を描くことで、二つの目で空間を見たときの視覚を模倣していた。この結果、画面の中央の特徴が両端の特徴よりも高く見え、現代の目には、まるで湾曲したレンズを通して見るように見える。ボスコレアーレの絵画を調べると、消失点が使われており、これらは地平線に収束するのではなく、中央の垂直線に沿って上下に収束していることがわかる。このような遠近法が劇場で使用されていた場合、ルネサンスの一点遠近法の背景よりも、観客席の端からの深さの認識が歪むことはなかったと考えられる。
