20世紀後半、イギリスのデザイナーたちはその舞台デザインにおいて国際的に大きな注目を集めた。彼らの創作活動は、演劇を支援する文化のもとで発展し、ヨーロッパの他の芸術的革新とも密接な関係を持っていた。観光産業を主な対象とした商業的な作品も影響を与えたが、イギリスの観客は一般的な大衆文化としての娯楽よりも、芸術的表現や革新性を重視する傾向があった。これは、イギリスが持つ豊かで長い演劇の伝統に加え、第二次世界大戦以降の政府による芸術助成、強力なナショナル・シアターの存在、そして公演・演出・デザインにおける高い水準によるものだった。
ピーター・ブルック(Peter Brook, 1925-2022)
イギリスの演出家。革新的な演劇手法で知られ、特にミニマリズムと空間の活用に優れた作品を生み出した。代表作には『マラー/サド』、『夏の夜の夢』、マハーバーラタを舞台化した『マハーバーラタ』などがある。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)で活躍し、のちにフランス・パリに拠点を移し、ブッフ・デュ・ノール劇場で実験的な作品を制作した。
サリー・ジェイコブス(Sally Jacobs, 1932-2020)
イギリスの舞台美術家。ピーター・ブルックとのコラボレーションで知られ、特に『夏の夜の夢』(1970)の白いトランポリンを使った革新的な舞台美術が高く評価された。ミニマリズムとシンプルなデザインを取り入れつつ、空間を生かしたダイナミックな舞台を創出した。
クロエ・オボレンスキー(Chloé Obolensky)
フランスの舞台・衣装デザイナー。ピーター・ブルックとともに数々の作品を手がけ、『マハーバーラタ』の衣装デザインで特に知られる。民族性や歴史的要素を取り入れたコスチュームデザインを得意とし、ブルックの演劇的ビジョンを視覚的に支えた。
パメラ・ハワード(Pamela Howard, 1939-)
イギリスの舞台美術家・演出家。舞台美術の教育者としても影響力を持ち、舞台デザインを通じて物語を視覚的に語る手法を確立した。特にオペラやミュージカルの分野で活躍し、演劇の中に視覚的・歴史的な文脈を織り込むことに長けている。著書『What is Scenography?』は舞台美術の概念を深く掘り下げた重要な書籍。
リチャード・ハドソン(Richard Hudson, 1953-)
イギリスの舞台美術家。オペラやバレエの舞台美術を数多く手がけ、ロイヤル・オペラ・ハウス、メトロポリタン・オペラ、コヴェント・ガーデンなどで活躍。ディズニーの舞台版『ライオン・キング』(1997)の舞台デザインを担当し、アフリカの伝統美術を取り入れたビジュアルが高い評価を受けた。
マリア・ビョーンソン(Maria Björnson, 1949-2002)
フランス生まれの舞台美術・衣装デザイナー。アンドリュー・ロイド・ウェバーのミュージカル『オペラ座の怪人』(1986)の豪華な舞台美術と衣装デザインで世界的に有名。クラシックとモダンの融合を得意とし、幻想的で華やかな舞台空間を創り出した。
ジョン・ベリー(John Bury, 1925-2000)
イギリスの舞台美術家・照明デザイナー。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)やナショナル・シアターで活躍し、特に1960〜70年代のイギリス演劇の舞台デザインに大きな影響を与えた。舞台美術と照明を一体化させた演出的アプローチを確立した。
ティモシー・オブライエン(Timothy O’Brien, 1929-2022)
イギリスの舞台美術家。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーやロイヤル・オペラ・ハウスで活動し、現代的なデザイン感覚と伝統的な技法を融合させた舞台美術を創作。抽象的かつ機能的な舞台空間を構築することに優れた。
ラルフ・コルタイ(Ralph Koltai, 1924-2018)
ドイツ生まれのイギリスの舞台美術家。抽象的で革新的な舞台デザインを特徴とし、シンプルな形状や大胆な色彩を用いた実験的な作品を多数手がけた。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)などで活躍し、20世紀後半のイギリス舞台美術に大きな影響を与えた。
それぞれの人物が、舞台美術や演劇において独自の革新をもたらしたことがわかりますね。特にピーター・ブルックの影響下にあったデザイナーが多く、彼の演出スタイルとともに舞台デザインの進化に貢献しています。
懐かしいなまえが。
ジョン・ベリーさん 彼の自宅で2週間英語も出来ないのに図面とデザインの手伝いを。劇団から派遣されたとはいえ無謀で充実した時でした。彼は照明、衣裳と舞台美術全てをデザインする人です。今のNTをピーター ホールと作り上げました。日本舞台美術家協会とも深い関係がありました。
マリヤ・ビヨルソンさん
日生劇場オペラ座の怪人初演、お互いリスペクトしながらも沢山戦いました。2001ピーターホールのはからいで、NTギャラリーで開催した日本舞台美術家倶楽部13人の模型展にロシアから帰国したマリアがシゲーと訪れました。その数ヵ月後還らぬ人に。
土屋さん
コメントありがとうございます!
すごい!!エピソードですね。
今度お話し聞かせてください。