第1章: 古代ギリシア・ローマ劇場の舞台美術(要約)

この章では、古代ギリシアおよびローマ劇場における舞台美術(Scenic Design) の発展について解説されている。

1. 古代ギリシア劇場の始まり

西洋演劇史において、舞台美術の起源は 古代ギリシア、特にアテナイの劇場 にある。初期の舞台は、必ずしも明確な舞台美術を伴っていたわけではないが、演劇の発展とともに、舞台の背景や視覚的な要素が重要視されるようになった。

2. スケネ(Skene)の登場

ギリシア劇場において重要な要素となったのが スケネ(Skene) である。

  • 当初は 俳優の控え室 程度の簡素な構造だったが、次第に劇の背景としての役割を持つようになった。
  • 神殿や宮殿などを象徴 する背景として使用されるようになり、オルケストラの後方に建てられた。
  • スケネの正面には 複数の扉 が設けられ、劇の進行に応じて活用された。

3. ピナケス(Pinakes)と舞台装飾

スケネの壁面には、ピナケス(Pinakes) と呼ばれる 絵画パネル が掛けられることがあった。

  • ピナケスは劇の場面に合わせて交換され、風景や場所 を象徴的に表現した。
  • ただし、当時の舞台美術は 写実的な表現ではなく象徴的な意味合い が強く、遠近法の概念はまだ発達していなかった。

4. 舞台機構(MechaneとEccyclema)

ギリシア劇場では、以下のような舞台機構が導入された。

  • メカーネ(Mechane):クレーンのような装置で、神々が空から現れる場面 などを表現した(「デウス・エクス・マキナ」の語源)。
  • エッキュクレマー(Eccyclema):舞台奥の場面を観客の前に移動させる 移動式の台 で、屋内の様子や劇的な場面転換に使用された。

5. ヘレニズム時代とローマ劇場の発展

ヘレニズム時代になると、劇場建築はより壮大になり、ローマ劇場 ではさらに発展した。

  • ローマ劇場では、ギリシア劇場の影響を受けつつ、より豪華で写実的な舞台美術が追求 されるようになった。
  • アウライウム(Aulaeum):開閉式の幕が登場し、劇の開始・終了や場面転換に用いられた。

6. ローマ劇場における舞台美術の多様化

ローマ劇場では、以下のような装飾や演出が取り入れられました。

  • 彫刻や建築装飾を取り入れた舞台デザイン
  • 複雑な舞台機構 を用いたスペクタクルな演出
  • しかし、後期ローマ帝国になると、舞台美術は次第に簡素化 していった。

7. 視覚的要素の重要性

古代ギリシア・ローマ劇場では、言葉による表現が中心 だったが、次第に舞台美術などの視覚的な要素も重要になり、観客に強い印象を与えるようになった。こうした舞台美術の発展は、後の西洋演劇の基礎となった。

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