第9章: アメリカの「ニュー・ステージクラフト」、ロシア構成主義、叙事詩演劇、バウハウス(要約)

この章では、20世紀の演劇における重要な舞台美術の潮流として、アメリカン・ニュー・ステージクラフト、ロシア・コンストラクティヴィズム、叙事詩演劇、バウハウス について解説されている。

1. 20世紀初頭の舞台美術の変革

20世紀に入ると、現実主義や自然主義 の舞台美術に対する反動として、より様式化された象徴的な舞台美術 が求められるようになった。この変化は、第一次世界大戦後の社会情勢や新しい芸術思潮 の影響を受けている。

2. アメリカン・ニュー・ステージクラフト

アメリカでは、ヨーロッパの新しい演劇の影響を受け、アドルフ・アッピア(Adolphe Appia)やエドワード・ゴードン・クレイグ(Edward Gordon Craig) の提唱する抽象的な舞台装置が取り入れられた。

  • ジョー・ミールツナー(Jo Mielziner) らによる舞台美術は、暗示性を重視し、観客の想像力を喚起 するものだった。
  • 照明を駆使した劇的な演出が特徴であり、当時のアメリカ演劇に革新をもたらした。

3. ロシア・コンストラクティヴィズム

ロシア革命後、芸術は社会変革の道具として捉えられ、演劇も実験的な試み が盛んに行われた。

  • コンストラクティヴィズム は、舞台美術においても大きな影響を与え、機能性・合理性・工業的な素材の使用 を特徴とした。
  • ヴェスニン兄弟(Vesnin brothers)、リュボーフィ・ポポーワ(Lyubov Popova)、ヴセヴォロド・メイエルホリド(Vsevolod Meyerhold) らの演出では、身体性を活かすプラットフォームや階段 などが用いられ、演者の動きを重視した舞台空間が作られた。

4. 叙事詩演劇(Epic Theatre)

ドイツの劇作家 ベルトルト・ブレヒト(Bertolt Brecht) は、観客が物語に没入するのではなく、批判的に劇を観る ことを目的とした。

  • そのため、簡潔な舞台装置 が用いられ、物語の背景を示すと同時に、社会的なメッセージを伝える 役割も担った。
  • 照明や字幕を使い、物語を分かりやすく伝える手法が特徴的である。

5. バウハウスと舞台美術

ドイツの総合芸術学校 バウハウス(Bauhaus) では、演劇の分野でも革新的な試みが行われた。

  • オスカー・シュレーマー(Oskar Schlemmer) は、幾何学的な舞台装置や衣装をデザイン し、舞台における人体の動きや造形美を追求した。
  • バウハウスの演劇実験は、後の舞台美術やパフォーマンスアートに大きな影響を与えた。

まとめ

この章では、20世紀の舞台美術が、社会背景や芸術思想の変化とともに、どのように伝統的な舞台表現を変革していったのか が解説されている。それぞれの潮流は、演劇の表現手法を大きく変え、現代の舞台美術にも影響を与え続けている。

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