Josef Svoboda(ジョセフ・スボボダ)1920-2002 舞台美術 [チェコ]

【人物】 チェコスロバキア(当時)出身の、20世紀で最も影響力のある舞台美術家の一人です。建築家としての知識も持ち、科学技術を駆使して、それまでの舞台美術の概念を大きく変えました。

【コンセプト】 彼の舞台美術の最大の特徴は、それが単なる「背景」ではなく、俳優と共に**「動く」、そして「変化する」、ダイナミックな空間**であったことです。彼は、舞台装置が演劇の進行に合わせて姿を変え、登場人物の心理を映し出すべきだと考えました。

【主な手法・特徴】

  1. キネティック・ステージ(動く舞台):
    • 廻り舞台や迫り(せり)、動く階段やパネルなどを巧みに使い、舞台装置そのものが劇の進行に合わせて変容していく空間を創り出しました。セットは固定されたものではなく、パフォーマンスの一部でした。
  2. 光のセノグラフィー (Scenography of Light):
    • 光を単に俳優を照らす「照明」としてではなく、**空間を創り出す「建築材料」**として扱いました。無数の低電圧の照明器具を並べて光のカーテンや壁を作り出し、舞台空間を自在に区切ったり、非物質的な空間を立ち上げたりしました。
  3. プロジェクション(映像)の活用:
    • 演劇に映画フィルムやスライドの投影を本格的に導入した最大の先駆者です。スクリーンに映し出される映像と、舞台上の生身の俳優とを共存させたり、対話させたりすることで、時間や場所を自由に超える新しい演劇表現を生み出しました。

【代表的な仕事】

  • ラテルナ・マギカ (Laterna Magika): 1958年のブリュッセル万博で発表され、世界に衝撃を与えた、生身の俳優と複数の映像スクリーンを融合させたパフォーマンスです。スボボダの名を国際的にしました。

【目指したもの】 スボボダが目指したのは、舞台空間を、戯曲の持つドラマや登場人物の心理状態を表現するための**「心理塑性的な空間(psycho-plastic space)」**、つまり、ドラマに応じて自在に姿を変える柔軟な空間にすることでした。彼のデザインは常に演劇そのものと分かちがたく結びついていたのです。

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